パッション屋良

彼のンー!ンー!と言って胸を激しく殴打する激越な芸。
よく見ると彼が使用している手は左である。恐らく彼は体を鍛錬しているとは思うが、通常利き手ではない左手をあえて使っている。それはつまり心臓に打撃を与え酷使することを意味する。パッションとは情熱の意である。煮えたぎる血潮の流れる中核でありながら非常に脆弱なその部位を一心不乱に殴り続けることで己の燃えたぎる情熱を表現しているのだろう。
さらに驚くことに、彼は殴るごとに一回一回息継ぎをしている。微かに「 ンー!( スゥッ! )ンー!( スゥッ! ) 」と何度も新鮮な空気を取り込んでいる。前身を力ませつつ集中力を保つための至難の業なのだ。
強化された岩盤の如き胸筋と大量の酸素を取り込む技術、そして何より心臓を殴り続けるという不惜身命の意志こそが、あの芸を可能にしているのだ。