Sweet Memory

白米を咀嚼し続けるとアミラーゼがデンプンを分解し甘味を生じるという。しかし、私は未だかつてその体験がない。確認のため、キーボードを乱暴に指で弾いているこの瞬間も炊き立ての米で口を満たし、カルピス原液に近い状態になるまで噛み続けているが一向にスウィーツの兆候は観測できない。唾液の分泌は多い方である。また、中学校でデンプンに唾液を加え糖への変換を調べる実験を行ったとき、私が試験管に唾を吐きかけると正常に糖が見られた。しかし、いずれの食卓、記憶している全てのホカホカご飯において、糖分によるエンジョイは皆無である。
話は変わるが、肩こりに苦しむ民族は日本人以外に殆ど無いらしい。欧米人に比べ筋肉の量が少ない、頭がデカい、働き過ぎなど諸説ある。しかし、実際に肩にマシンを当てて計測すると、同じく凝り固まっている場合が結構あるのだという。つまり彼らは乳酸の蓄積を鼻で笑い、今日もビーフを頬張っているという事だ。タフだとかそういうことじゃない。肩こりの概念が無いが故に、実際には肩こりとしてちゃんと存在する、その苦痛を感じるだけのセンスがないということだ。これは喜ばしい。
そうすると、先ほどの悩みも杞憂である可能性が濃くなってきた。実際にはちゃんと糖が生じているのだが、それを私は見くびって甘味と認めていないだけなのかもしれない。この程度の麦芽糖で俺を満足させられると思うなよ、とでも言わんばかりの傲慢な味覚と鈍い脳が、日本人として堪能すべき米食の快楽を妨げていただけなのかもしれない。