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嗜好品についてのあれこれ

私自身は煙草というものに特に嫌悪も愛好ももっていない。吸わないし吸ったこともないが、「煙草を吸うなんてとんでもない」とは思わないし吸いたければ吸えばいいと思う。


祖父は喫煙者だ(まだ存命である)。「愛煙家」というような人間なのかどうかは分からないが、依存している。祖父はそろそろ死んでもおかしくないような年齢なので健康には気を使ってほしいとは思うものの、一度祖母が煙草を取り上げたときに軽い禁断症状のようなものが出、虚ろになった目を見て煙草を奪った当人である祖母が一番錯乱したので禁煙計画はそれっきりである。
銘柄は決まってマイルドセブンで、今でも街中でマイルドセブンを嗅ぐと祖父を思い出す。


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祖父に煙草を吸いはじめたきっかけを訊いたことがある。
「徴兵されて、吸わなやってられんかった」
それ以上のことは訊いていない。


幼い頃祖父と風呂に入ったときに、祖父の右肩にはちょうど銃弾が収まりそうな半径の穴がぽっかり開いているのを見つけたのだけど、それも「穴」以上の意味を預かってはいない。余談だ。


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両親は煙草も吸わないし酒も飲まない。厳密には、父は遺伝的に下戸なので飲めない。ついでに父は甲殻類アレルギーなので海老蟹も食べれない。法事などで料亭へ招かれると、中盤で決まって蟹や伊勢海老が出るのでよく譲ってもらった。呑みの席ではコーラを飲みたいらしいが、一杯目は皆に合わせてビールなのだそうだ。
中学時代に仲が良かった友人に煙草を吸っている(当時から吸っていたのを含む)者は多い。両親は煙草が嫌いだし、未成年の喫煙が発覚すれば確実に叱られるので、私の家で皆で泊まったときは煙草のにおいを消すのに苦労した覚えがある。


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打って変わって煙草の生理的作用の話となれば、発がん性に常習性、どうあれど害だとは思う。酒も害だとは思う。当然大麻も害だしコーヒーも過ぎれば害だと思う。たぶん煙草を自分から吸うことはないだろう。運動能力の低下も惜しいもんだ。
でも酒はうまい。あとLSDとかトランスみたいな文化を理解するために一発ドラッグキメてみるのはアリかナシかで言えば「アリ」かと思うけど中毒から脱出できるだけの意志の強さはないっぽいのでやらないだろうなあ。コーヒーについては旨いけどションベンが近くなる飲み物という認識しかない。


格好付けの喫煙はダサいと思う。格好付けの飲酒もダサいし格好付けでブラックコーヒー飲むのも滑稽だ。大学でも「あ〜ヤニ切れてきたわ〜」とか言う人がいるけど友達じゃないし殴ったら多分勝てるので何も思わない。


嗜好品の類は人によって好みが分かれるので、当然社会のトータルで見れば、嫌い・まずい・つらい、という声も大きくなる。そこから「嗜好品を楽しめることが『強さ』だ」と勘違いした人間が、ヤニ欠アピールを展開したり他人に酒を飲ませたりするような気がしている。


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反面、風景としての格好良さ、小休止代わりのルーチンワークとして嗜好品を嗜むのには多少の憧れがあったりする。一日が終わった、仕事が終わった、大切な人と会った。その終端で、ワイングラスを空ける、煙草を呑む、コーヒーを淹れる。そういう行為がなにか一つあることの楽しみは、知らずに死ねないなとも思う。


深夜二時にレポートを書き終え、読み返し、うんいい出来だ。仮説も考察もキレてる。そう思って横にあったのがココナッツサブレでは、どうにもだめだなと思った。


こういうタイミングで煙草をプカアとふかす人間の顔を知ってる。
こういうタイミングで焼酎をグイッとあおる人間の顔を知ってる。


その顔を思い返しながら、がばりとベッドに倒れこむ。