脂の泉 銀の沼

ハンバーグを割って肉汁が流れ出る。「わー見てください凄い肉汁ですよ!」あるいはメンチカツ。私はあれを美味しそうだと思ったことがないのだけども、未だにグルメ番組でハンバーグと言えば割って汁割って汁、いわば素人OLモノにおけるパンストと同じく、興を削ぐと罵られつつもレールを転がり続ける悲劇の様式美なのだろう。


焼き肉でも、解凍肉でないかぎりそこまで肉汁は出ない。ハンバーグの肉汁を構成する要素としては、まず微塵切りのタマネギの水分が多い。次に牛脂、合びき肉なら豚脂が熱で溶融したもの。普通にハンバーグを作ればそれくらいしか液体を成す要素はないのだが、調べてみるとゼラチン質のゲルを混ぜ込む方法や、種類の違う肉を使って内外を二層に分け、焼く過程でできた空洞に肉汁を閉じ込めるなど狂気じみたメソッドが存在するらしい。それにより、切れば断面から滲む程度で十分であった肉汁はいつか堰を崩したように流れ出ることを要求され、終いにはナイフを刺せば噴水のように噴き上がる始末。私はその画に昔LiveLeakで見た卵巣腫瘍の切開を思い出す。あるいはそうでなくとも出血や膿だしのごときグロテスクな生理を思わせるのだが、テレビ的には極上らしくそれを信奉する視聴者もいる。


たしかに下手なハンバーグは水分が全て流れ出てボソボソした不味いものになる。しかしだからと言って閉じ込めれば閉じ込める程良しかというとそうではないだろう。小龍包のようにまるごと食べるわけでもなく椰子の実のように穴を開けて飲むものでもないのだから、破裂した水風船をすするような食べ方しかできないハンバーグに価値があるとは思えない。性淘汰で角が異常に肥大化したオオツノシカ、技術をひけらかす為に水枕と化したハンバーグ、数リットルの水を飲む潮吹きクイーン紅音ほたる、どれも進化の暴走だと思う。じきに音姫からメタリカが流れ出す。